ごあいさつ
12年勤務した国鉄を民営分割の際に退職した私は、東京のパン屋「ルヴァン」で8年の修行を重ね、1999年に広島の中山間地域に位置する庄原市総領町の五箇に石窯焼きの自家製天然酵母パン工房「ル・サンク」を開きました。
「ル・サンク」という名前はフランス語の「le cinq」即ち「the five」で「五箇」という地名に由来します。福山市神辺町出身の私にとって、総領町は福塩線の遥か彼方にある山間の豊かな自然の期待できる土地でした。今はそこに根を張り、妻と二人でパンづくりに励んでいます。
「ル・サンク」のパンは「ルヴァン」で学んだことを基本にした国産小麦粉を自家製天然酵母で発酵させるタイプのパンです。環境の違いからか、当初は教わった通りにはうまく発酵せず、試行錯誤を繰り返し、相当の創意工夫も必要でした。
現在、「ル・サンク」がベースとしている天然酵母はレーズンのフルーツ種です。発酵力を高めるために初種を3回ほど継いでパン種として使用しますが、この間フルーツ種は乳酸菌による酸味が生じて、これが苦手と言われる方も少なからずいらっしゃいます。しかし、私にはこの酸味こそが旨味の元と思われ、逆に酸味のない天然酵母パンは物足りなく感じてしまいます。
このような無骨なパンですが、気に入ってくださいましたら本当に嬉しいです。
2015年11月 店主・長谷川一成