ル・サンク自家製天然酵母パン【Le☆Cinq】

ル・サンク自家製天然酵母パン

〒729-3711
広島県庄原市総領町五箇289(Map

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すこぶる広島:石窯パンをふるさとの元気の味に

1999年4月 1日(木)【,

広島県グラフ誌『すこぶる広島』Vol.24(1999年5月号)の「まち行きむら行き【総領町】石窯パンをふるさとの元気の味に」で「パン工房から夢ふくらむ。」の見出しでル・サンクのことが紹介されました。

広島県グラフ誌 すこぶる広島 Vol.24 1999年5月号

広島県グラフ誌 すこぶる広島 Vol.24 1999年5月号

広島県グラフ誌 すこぶる広島 Vol.24 1999年5月号 午後1時、まだ新しい石窯がらアツアツホカホカのバンが焼き出される。香ばしさが、あっと言う間に工房に広がった。

 今年1月、総領町にオープンしたばかりの石窯パンの店「ル・サンク」。フランス語で「5」を意味するその名は、店を構えた五箇地区にちなんでつけられたもの。店を切り盛りするのは、「いずれはパン屋を」という長年の夢を携え、昨年4月に東京〜家族で引っ越してきた長谷川一成さんだ。

 長谷川さんは神辺町の出身。総領町とは縁もゆかりもなかった。
「とりあえず、県の定住促進センターに相談していろいろ紹介してもらったんです。それであちこち歩き回ってここがいいな」と、日本の農村の原風景のような、静かな山里が気に入った。

 「越して間もない時期、ウグイスの鳴き声で日が覚め、カエルの嗚き声を聞きながら眠りにつくという感じで.向かいの小川は、6月になるとホタルが乱舞しているんですらなんて、いいところなんだと思いました「横浜生まれの横浜育ちで、いわゆる「田合の暮らし」に憧れていたという妻の孝子さんは、満足そうにほほ笑む。とはいえ、越した先は右も左もわからない土地。そこで初めてパンの店を持つということに、考えれば切りがない不安もある。そんな家族のもとへ、花見の誘いが舞い込んだ。

 「はやざき総領」は地元の町おこしグループ。花見にかこつけて長谷川さん家族を盛り立てようと集まった。ところが長谷川さんは「予想以上に自宅の改築費がかかって、開店はしばらく延期する方向で」と打ち明ける。グループの面々は「自分たちに出来ることは、何でもバックアップするから、ぜひ、頑張って開店させてほしい」と後押し。力強い協力者の思いがけない出現に長谷川さんも、がぜんやる気がわいてきたここから、開店に向けて準備が慌ただしく始まる。バンを焼く石窯は地元の左官さんが作ってくれたぅところどころに、手作りの味わいがのぞく。

 炭のかき出し棒は、市販のサイズにぴったりのものがなくて、開店の前日、メンバーが製作、必要な道具はこうしてそろえられて、ようやくみんなの支えにこたえる形で開店にこぎつけた。

 石窯で焼き上げるパンは、プレーン、レーズン、クルミ、クルミ&レーズンの4種類。素材から作り方まで、長谷川さんがとことんこだわったもの。自身は東京時代に8年間、天然酵母を使ったパンの店に勤めていたこともあって、ノウハウは身に付けていた。国産の小麦。レーズンで培養した白家製天然酵母.有機栽培のクルミやレーズン、自然塩、天然素材だけで小麦本来の味を引き出す。

 焼き方もシンブル。まず、3時間かけて薪を焚いて石窯を熱くする。温度のころ合いを見計らって、炭をかき出し、バン生地を入れると25分ほどでふっくら焼き上がる。「石窯で焼くと、遠赤外線効果で均一に加熱できるのでおいしくなる」そうだ。1日に約80個を焼き上げるのが限界で、ほとんどが予約で完売。しかし、納得できるパン作りのために、今のところこれ以上の規模は考えていない。

 今は石窯との付き合いも浅くて慣れないことも多いが「応援してくれる地元の人への恩返しの意味も込めて、健康に気をつけて頑張っていきたい」と長谷川さんは意気込む。

 ところで、はやざき総領には、会則といったようなものは一切ない。活動はとにかくユニーク。例えば、町内、町外を問わずイベントがあれば、押しかけて行ってヨイショしながら景気づける。町へ転入して来た人があれば温かく迎え入れ、あれこれと世話を焼く。「なにかにつけての応援団なんです」とグループの代表を務める谷本淳一さん。話を聞いているだけで、何となく元気がわいてくるから不思議な人だ。

 町も地域の活性化に熱心で、過疎を逆手にとった町おこしを展開している。そんな中、はやざき総領の活動について「いつも自然体でこの時代によく合った町おこしのスタイルではないでしょうか」と総領町・町づくり推進課長の和川芳治さんは評価している。

 「日本の農村の原風景のような」と、長谷川さんを魅了した総領町。人の輪の温かさから、夢がふくらむ。